東京都心の駅構内の居酒屋で、アルバイトをしたことがある。

当時女子大生だった私が居酒屋で夜アルバイトをするというので、母親からはひどく反対された。

なぜ居酒屋が良かったのかというと、一番の理由は時給が良かったから。

その次の理由が、料理を覚えたかったからだった。

料理を覚えたいのなら家で母親に教えてもらえばいいのにと多くの人は思うだろうが、私の母は娘に料理を教える気がなかった。

それに親に教わるよりも外で仕事をしながら覚えたほうが、身につくだろうと思ったのだ。


世間知らずな私が、そんな甘い考えから始めた、東京の居酒屋厨房のアルバイト。

どうしてホールじゃなくて厨房なの、といろいろな人から聞かれた。

私くらいの年かっこうの女の子はみんなホールで働いていたからだ。

厨房の中はびっくりするほど男社会。

居酒屋の厨房といっても、アルバイトの人数はさほど多くなく、料理業界で経験を積んできたベテラン社員が多かった。

そうとは知らずに飛び込んでしまった、実家暮らしで料理もろくにやってこなかった私。

今思えばどうして採用してもらえたのだろう。


私は寿司などを取り扱うコーナーの担当になり、簡単な仕事から任せてもらった。

大きな釜いっぱいに入ったほかほかの寿司飯を機械に入れて、寿司のシャリをどんどん作る。

この機械はよく壊れるので、そういうメンテナンスもする。

それから海鮮鍋の具材をきれいに盛ったり、煮物に使うじゃがいもの皮をひたすらむいたり。

梅ときゅうりをあえて出したり、おにぎりをにぎったりすることはあったけれど、あまり料理の勉強にはならなかった。

それでも年末の忘年会シーズンになると、社員もアルバイトも厨房の人たち全員でシャリの上にネタを乗せたり、楽しかった。

東京でしたアルバイトの中でも、この仕事はとりわけ思い出に残っている。

2011-02-17カテゴリ『東京』. You can follow any responses to this entry through the feed. You can leave a response, or from your own site.

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